ほとんどの冒険には陰謀の要素が含まれている。そしてほとんど戦闘だけのダンジョン探索でさえ、速度を変えるための微妙なニュアンスを含む遭遇が動きを止めることによる利益がある。物理的な戦闘に比べると敵対要素が少ないため、陰謀は戦闘と対比される形で扱われる。そしてそれはキャンペーンの最高潮の瞬間を強調し高めるものとして扱われ、緊張をゆっくりと自然に高め、物語における満足を生み出す助けとなる。
以降に示される「陰謀に基づくゲーム」の全ての内容は、それこそちょっとした腹黒さから徹底した政治スリラーまで、さまざまな陰謀の深度が含まれる。
本章には、君のゲームに陰謀の濃厚な要素を加えるため、以下の新しい下部構造や新ルール、助言が掲載されている。
感化/Influence:このルール体系はキャラクターがさまざまな組織からどれほどの影響力と評判を得ているかを数値化する。社会的なやりとりを単なる少々の技能判定に煮詰めるのではなく、感化ルールは長いシーンを通して描かれる堂々巡りを生み出す。これによりそのような集団と関係を結ぶことでしっかりとした報酬を得られる。それらはゲームに合うように独自の編集を加えることができるのだ。
強奪/Heists:本項では強奪を組織化し運用する際の情報がまとめられている。例えばものを盗む、人を救い出す、あるいはその他の目的のために、詐欺をしたり複雑な防護をくぐり抜けたりする場合が想定される。本項では、同様の侵入に関しての議論もある。
統率力/Leadership:《統率力》特技を拡張した本項では、統率力をゲームの中に組み込む方法を提供する。これによりPCは雇い人や他の従者を惹きつけることができる。陰謀を背景にしたゲームで統率力がどのように作用するかや、腹心や従者がこのようなキャンペーンでどのような役割を担うかについての助言も掲載している。
宿敵/Nemeses:敵対関係にある相手との劇的な言い争いを盛り上げるために、宿敵ルールは敵がパーティに対して取り入れる無慈悲な計略を追加する。さらに本項には、どのように敵意を増幅させるかや特定の策略、経験点による報酬をどうするかに関する提案も掲載している。
追跡/Pursuit:数日に渡る長い追跡のため、新しい追跡ルールは追跡者と獲物のいずれにもedgeを得る機会を与えることで、このような堂々巡りを楽しく戦略的なものへと変える。
調査/Research:曖昧な情報は大きな図書館や他の知識の山に埋もれている。調査ルールは古代の書物の中へと深入りし珍しい情報を拾い集める流れを与えてくれる。
陰謀の呪文/Spells of Intrigue:多くの呪文はキャラクターに嘘を見破り、必要な知識を持つクリーチャーを魅了し、その他社交的なやり取りをスキップすることを容易にし、陰謀に基づいたゲームに問題をもたらす。本項ではそのような呪文の一般的な用語と特定の強力な呪文について議論する。
以下に示す要素は君のゲームに陰謀を加える助けとなる構成要素である。陰謀の比率の低いゲームやセッションで複雑な問題を導入するために要素の1つを使用することもできるし、複数を同時に取り入れることで、君のキャンペーンに入り組んだ陰謀の網を織り込むこともできる。
ダンジョン探索を主に取り扱うグループにおいても、拠点とする街の裏に権力闘争を取り入れたり、手先としてPCを扱おうと狙う2つの宿敵の間に挟まれたりすることもあるだろう。ただ1つの要素をフレーバーとして取り入れたキャンペーンでは、このような要素を定期的に取り入れるのは重要なことだ。しかし、全てのセッションに必要なわけではない。
陰謀に基づくゲームでは、個人的な関係にスポットライトが当たり、それぞれの関係は多様で異なる役割や目的を持つ。時間や相互作用によって人が反応し感情を抱く形はこのようなゲームの計画の中心であり、役割1つで無視されたり飛ばされたりするものではない。関係性と忠誠心は、さまざまな形でキャンペーンに印を付ける。
長期的な報酬/Nonmonetary Rewards:他のキャラクターとの関係やそれらの関係から得られる恩恵や特権は基礎的な報酬であり、単なる貨幣と同等、あるいはそれ以上の価値がある。有力な友は社会イベントに参加できるようにしてくれ、贈り物を与え、情報を提供し、問題を遠ざけ、キャラクターの振る舞いにさまざまな利益を与えてくれる。ときに、友情はそれ以上のものとなるかもしれない。それ自身もまた報酬になり得るだろう。
忠誠心と緊張/Loyalties and Tension:全てのキャラクターは自分の底意と忠誠心がある。それはPCに協力するものたちもまた例外ではない。キャラクターは彼らの周囲の世界で起きた出来事に対して何らかの形で行動し、反応する。それは世界の人々の興味を引き、その思いと合うかを評価される。このようなゲームにおける緊張のいくらかは、他人がどう行動するかが定かではないことから生じる。とりわけ、忠誠心が砕かれる衝突が生じるような決定的瞬間においてはそうだ。PCの盗賊は衛兵の友に、詰所に圧力がかけられている時に金庫破りに来ていないと信じてもらうことができるだろうか?今や女王となった王女は、魔女に避難所を与えるという約束を王宮から与える協力をしてくれるだろうか、それとも男爵が離反する恐れがあるためにより人心を集める立場へと変えてしまうだろうか?PCの管財人はすりの家族に対する犯罪組織のボスの脅威に屈服してPCのものを横領するだろうか、それともPCに情報を提供し家族を危険にさらすだろうか?
NPCがそのような高い圧力を感じる状況にどう反応するかは、個性や人間性を表現する役に立つ。PC側に立つNPCがこれらの例示した状況に立たされた場合、そのNPCはPCに対する忠誠心を強力に示すことになる。PCが報酬として忠誠心を獲得するなら、PCの功績を補強するものとなるだろう。いずれにせよ、それはPCに強い印象を与え、NPCをより近しいものとして扱うようになるだろう。NPCが屈服したとしても、それで悪役になるわけではない。その本意でない敵対行為は、PCに特別な思いを持たせる役割となりうるだろう。
裏切り/Betrayal:古風な裏切りとは対照的に、かつての仲間が状況に強いられ、忠誠心と対峙しながらPCの興味に対する行動をとることほど、そのNPCに悪意を抱かせるものはない。NPCがPCを計画の準備として嘘の内容でPCを雇ったにせよ、敵に情報を提供するために仲間のふりをしているにせよ、裏切り者は立ち去り、強い感情的な応答を生み出してくれる。
もちろん予想通りであるよりも予想外の裏切りの方がずっと強い印象を与える。NPCがPCを何度も裏切るようだと、君はPCが構築したキャンペーンでの関係性を破壊し、NPCとの協力関係を結び忠誠心を獲得するために費やしたPCの努力は台無しになってしまう。この指針の例外はより厳しいひねくれたキャンペーンで、裏切りが常態化している場合でも協力関係が必要な場合だ。そのようなゲームを運営している場合、プレイヤーがこのことをあらかじめ知っていることが重要だ。最低でも、この社会のひねくれた不誠実な側面をPCが一度対処した後、少し時間が経ってからが良いだろう。そのようなゲームでさえ、裏切られる可能性が頻繁でプレイヤーとキャラクターの双方の心に常にあるとしても、全ての関係が裏切りで終わるべきではない。そうしなければ、その衝撃はすぐに失われてしまう。
階層構造/Hierarchies:階層構造は忠誠心の構造化されたシステムである。それは政治的な場合もあれば、社会的、軍事的、その他どのようなものでもありえる。陰謀を根底に置いたゲームでは、階層構造の高みに向かうことはお金とは別の報酬を示す素晴らしい手段である。階層構造のどちらの方向から見た場合でも、階層構造は興味深い筋書きや忠誠心の衝突を描く素晴らしい要素である。階層構造の一員になることでPCは所属意識を強く持ち、陰謀に関与する冒険で行動や追求を行う理由を得られる。階層構造の中で活動する敵は大きな存在となる。階層構造に所属していることが強さと弱さの相反する源になりえるからだ。敵とPCが同じ階層構造の一員であるならば、極めて面白いことになるだろう。両方のキャラクターが同じシステムの地位によって力を得、束縛されるのだから。
陰謀を主題にしたゲームにおいて、敵は秘密の活動に携わり、互いの行動を阻止しようとしている。現実世界とちょうど同じように、新たな策とその対策の発明は、互いの弱点を利用し自分の立場を高めようとするため、表面下で巻き起こる隠れた衝突を拡大させる。情報を暗号化する新しい方法や敵の秘密を暴く呪文のように、ファンタジー世界ではこれらの優位は魔法的なものでもそうでないものでもありえる。この観点では、新しい呪文を加えるのも良いだろう。それは未知の呪文書に書かれたものかもしれないし、PCが発明したものである場合さえあるだろう。しかし、PCの敵がそれを理解すると、彼らは最終的にその対策を手に入れ、そのサイクルは繰り返されることになる。
この要素を使用する場合には気をつけてほしい。理想的には、PCの敵がこの陰謀の軍拡競争にPCと同じペースで参加し、無能な操りやすい存在ではなく、信頼できるライバルに見えるようにする。しかし、PCがこの側面に全く興味がないのなら、NPCがこの軍拡を続ける必要はない。この助言は、パスファインダーRPGコア・ルールブックの基本的な呪文にさえ当てはまる。PCと彼らが行う予防策は、NPCが取るべき予防策のおおよその指針となる。
例外は策と対策の項に書かれた内容を、使用できる全ての呪文や道具に詳しくない新しいプレイヤーを含んでいたり、そのような人たちだけで構成されていたりするプレイ・グループに導入しようとする場合だ。そのようなグループでは、NPCが基本的な対策を使用した時に、NPCがそのような対策を使用することを初めて理解するかもしれない。例えば、NPCの依頼でPCが犯罪の調査を開始したとしよう。NPCはまず、自分がどのような調査手法を行ったかをPCに説明することから始めることができる。そしてその上で、犯人が行なっているかもしれない対策についての想定も伝えることができる。これにより、PCはプレイ中に突然発生する障害としてではなく、ゲーム世界の確立された要素として、これらの作戦や対策をシームレスに導入できる。そうすれば、彼らは最初からこれらの対策を回避したり、逆に利用したりすることを中心とした作戦を立てられるようになる。
ゲームによっては、成否が世論が下す判断によって評価され、「特定の方法であると見せること」が「実際にその方法であること」よりも重要であることが多いこともある。俺は多くのいかさまと裏切りにつながり、大衆の意見のぶつかり合いにもなる。そうして、双方が相手を「邪悪で主観的な意見である」と見なし、問題の本当の姿をないがしろにしていると主張することになる。このような状況では外面を維持することが重要となる。外面は陰謀に焦点を当てた冒険を行うパーティの鍵となる技術だ。外面が重視されることで、グループが行えるある種の行動は制限され、その結果、家に押し入って敵全てを武器と呪文で根絶するのではなく、間接的で慎重な、異常な戦術を持ち出すことになる。社会的圧力を利用して検討中の行動を制限することは、パーティ・メンバーのそれぞれが持つ多様な技能と能力に焦点を当てる優れた方法だ。しかし、その制限に意味があり、状況にうまくあっている場合に限られる。例えば、PCが邪悪な公爵の妹を助けたいと思い、公爵がその執事を殺した罪があることを証明するとしよう。その時に、公爵の従者と新しい執事を殺してしまうと、PCが偽善的で、同時に殺人狂であるかのように思われてしまい、懸命なやり方ではない。同様に、死霊術や(強制)効果のある呪文など、ある種の魔法が違法となる社会では、PCはこのようなやり方を控えめにし、違法な魔法の使用によって彼らの偉業が隠されることがないようにしないといけない、というのは理にかなっているだろう。
善悪の物質的な戦いを中心とするキャンペーンでは、妥協の余地はほとんどない。しかし陰謀に基づくゲームでは、それぞれのキャラクターが自分の興味や忠誠心に従って行動する。そのため、理性的な相手であれば、戦いを最後まで続けて破滅するよりも、交渉を提案する。このような妥協は、敵を破滅させるよりも多くの利益をPCに与えるだけでなく、自分にとって最も重要なものを保持できるようにしてくれる可能性さえある。ほとんどのキャンペーンではPCが勝つことになるが、このような提案はPCが優先権を確立し、どのように勝ち取るかを決めるよい機会となる。例えば、PCが奴隷となったハーフリングの解放を主な目的としているとしよう。この紛争では、PCの人生をより困難にするために、奴隷制度推進派が有力な判事に賄賂を渡している。PCは判事の経歴を永久に破壊できるかもしれない決定的な証拠を発見して状況をひっくり返すことができる。そこで判事はPCに提案する。「もしその証拠を隠し、自分が仕事を続けられるなら、自分の影響力を駆使してハーフリングの解放を支援し、PCに大きな利益を与えよう」PCはこの判事を信用するだろうか?ハーフリングを救いたいという望みと、この判事にデザートだけは手に入れる姿を見流ことになるという思いは、どちらが強いのだろう?
どのようなパスファインダーのゲームでも、例えそれが戦闘にのみ焦点を当てたゲームであったとしても、秘密は強力である。秘密を見つければ、キャラクターは敵の長所と短所を学習し、対策を寝ることができるからだ。とりわけゲーム内で陰謀を扱う場合、秘密はなおさら重要になる。実際、本当に強力な秘密は、竜の宝物庫よりもはるかに素晴らしい報酬となる。陰謀に関わるゲームにおいて、秘密は他の全ての要素と結びついている。秘密は人間関係を破壊し、忠誠心を変えてしまうことがあり、秘密を持つ人、公開する人の利益になることが多い。秘密を漏らすことは、人の外面を粉々にすることさえある。例えば、PCが〈交渉〉でどれだけ高い結果を出したとしても、言葉だけでは親切で誠実な女王を説得して、夫を暗殺したり追放したりすることはできない。邪悪な王は、最愛の妻も含めた全ての人に、自分が善人だと理解させているのだ。しかし、もしPCが国王のくらい秘密を説得力のある形で暴露し、女王に影響を与えるために熟慮した努力を行うことで、説得に成功できるかもしれない。また、秘密は恫喝の計画の一部となり、魅力的な取引や密談につながる可能性もある。もちろん、恫喝によって味方になることもあるだろうが、そのような協力関係は悪意に基づいたものだ。漏洩した秘密は危険なので、秘密を守ることが前述の「作戦と対策」の軍悪競争の大きな原動力となっている。そしてもちろん、キャラクターができる最も危険なことは、権力者が誰にも知られたくない秘密を発見することだ。
陰謀の要素が物語に含まれているなら、以下の陰謀に基づくテーマはいくつかの決まった形で陰謀の要素を組み合わせたサンプルレシピである。これらは単に要素を散りばめただけのものよりも、陰謀世界を深く掘り下げる冒険やキャンペーンへの扉を開く。
貴族の二重の取引と利己的な計画の中で行われる冒険は、関係性と忠誠心、外面の重要性、取引と譲歩、秘密という力の要素を組み合わせたものだ。PCが貴族の一員か、身分や財産をよりよいものにしようとする警備兵や召使いか、高貴な両親の肩書きを主張しようとする非嫡出子か、あるいは単に邪悪な貴族の家計に雇われた冒険者なのか、そのいずれであるかにかかわらず、すぐに権力と裏切りの織物の中に巻き込まれる。このテーマでは主要なプレイヤーが大きな影響力を行使するため、利害が非常に大きいものとなる。そのため、低レベルのPCであっても、このような状況でプレイすることに慣れているなら、自身が大きな原動力となって大きな影響力を持つことができる。このテーマを使用すると、誰もが自分の目標を持ち、自分の地位を高めようとする。そのため、利己的な行動がありふれたことであり、本当の犠牲や忠義の瞬間は稀で感動的であることを理解してもらえるだろう。政治の潮目が変われば、今日の敵は明日の味方になることもあり、多くの登場人物は善悪軸で中立であるか、わずかながら善ないし悪であることが多い。それは水を濁らせ、誰を頼ればいいのかが分かりにくくなる。
他の要素を使っても利益を得ることはできるが、地下犯罪世界を舞台としたキャンペーンは、基本的に関係性と忠誠心、作戦と対策、取引と譲歩の要素からの緊張を中心に構成される。公の場で積極的な態度を維持することで、貴族が不法な活動をしすぎることは防止できるだろう。しかし犯罪組織のボスはこのやり方では制限を受けない。地下犯罪世界では、キャラクターが築き上げる人間関係と自身の忠誠心と評判が、自分を長生きさせる主要な要素である。地下犯罪世界を探索する冒険者は、お金と権力を手に入れることを主な目的とした、善でないPCが関わることが多い。しかし、ロビン・フッドのような善意の無法者集団が腐敗した政府と戦ったり、抑圧された人々を助けようとすることだって可能だ。この場合、地下犯罪世界を案内することはさらに難しく、危険なことだ。なぜなら、PCは自分の道徳観や良心のために、他の犯罪者との間での交渉や信頼関係の構築が難しくなっていることに気づくことになるかもしれないのだから。
犯罪に関わるキャンペーンでは、しばしば強奪、詐欺、その他の不正行為が発生する。このような状況では、作戦と対策の要素が前面に出てくる。そこでPCは敵への防衛策を探し出し、弱点を利用するための計画を考え出さなければならない。
このテーマのキャンペーンでは、犯罪者の隠れた世界が、もっとも無害な場所や人々が見せる面の姿の下に潜んでいる。病気の流行を治療するために国境を超えて治療を行う慈善団体には、違法な化学物質を密輸する側面を持つのかもしれない。ある街のほとんどのギャングを排除したことで有名な保安官は別のギャングの保護と支援のもとで活動しており、そのギャングはライバルの縄張りや活動を乗っ取って利益を得たのかもしれない。PCがどこに行ってもどこで生活しても、この陰気な道徳の支配する世界でよく知られているような裏側の秘密を経験する。最初は善意で活動していたとしても、PCが周囲の世界に対して冷笑的になるのも無理はないだろう。
プロパガンダと世論の戦争に焦点を当てたキャンペーンは外面の重要性を中心に展開し、取引と譲歩と秘密という力
の要素で味付けされている。このテーマを用いたゲームでは、PCは特定の方法で世論に影響を与えようとする。PCは顧客のイメージを改善しようとする政治フィクサーかもしれないし、特定の政治活動を支持し、周囲から支持を得ようとするロビイストかもしれない。いずれにせよ、PCは情報、特に有害な秘密の管理に関与し、その大義を推し進めるために一時的な取引や提携関係を作り出す。他の種類の冒険の多くではPCが密かな不正の計画を発見しようとするが、プロパガンダ戦争では、PCは相手側にとって有害な秘密の使い方を見出し、決定しなければならない。PCはまた、自分の秘密や同盟関係の相手の秘密を葬らなければならない。政治的に不利であるにもかかわらず、これらの秘密は同盟関係の相手の積極的な悪意からではなく、彼らの尊敬すべき人間的な欠点や判断の誤りから生じることが多い。法に携わる卑劣なキャラクターがPCに自分の求める支援を提案してきたり、支援を続けることを申し出たりしてきた場合には、難しい選択を迫られることになるだろう。プロパガンダ戦争では社会的対立はほぼ当たり前のことで、戦場は世論の下す判断である。そのため、感化と舌戦がゲームの一部となる可能性もある。
探偵や弁護士などの刑事司法制度の一部としてキャラクターが登場するキャンペーンでは、作戦と対策と秘密という力の2つは陰謀要素の中で最も重要なものとなる。調査や法廷を扱うテレビ番組と同じように、このテーマを扱うゲームは、「今週の事件」や「今週の謎」など、ややエピソード的なものになる傾向がある。
探偵団にとって、謎とは犯罪者が調査に対抗して穴を埋めるものであり、目標を守る対策を破壊しようとする犯罪者の活動と表裏一体だ。それぞれの謎が探偵を陰謀の網の深くに引き込み、計画につなげることになる。周囲の人たちを不安にさせる真実が捜査によって明らかになったとき、PCは難しい決断を迫られるかもしれない。
弁護士も捜査に乗り出すことが多いが、彼らは相手の主張の弱点を見つけることに注力している。治安判事や陪審員を相手にした裁判では、弁護士同士の舌戦が複数回行われるかもしれない。その中に捜査や登場人物の間で行われたやり取りが散りばめられ、訴訟自体が大きな社会的対立となる。
様々な陰謀の要素を全て取り入れたキャンペーンでは、上記の全てのテーマが一緒になっている。利益を得るために陰謀を企てる貴族たちがいる一方で、他方では地下犯罪世界の深淵があり、政治フィクサー、ロビイスト、法執行機関のような人々が、その間に存在する。それらは両面から互いに支援し、利用し、順番に利用されている。PCはこのような危険な世界を切り抜けなければならず、分断された忠誠心にどう対処するか、あるいは共通の脅威に対処するために意見の相違を割り切るか、といった難しい決断に直面しなければならない。例えば、兄から王位を奪おうとする邪悪な女公爵がいる。彼女が証拠を残さずに貴族達を殺すことができるように犯罪者に魔法による支援を与えるとしよう。彼女は有力な犯罪組織の力を借りている。パーティは殺人事件の捜査を担当する刑事と、殺害された貴族の息子と、犯罪組織に敵対する組織のボスの娘という、思いもかけない組み合わせで構成されているかもしれない。3人ともがそれぞれの理由で陰謀の網を潜り抜けようとするかもしれないが、それぞれが異なる背景を持っているために、背景が衝突した時には必然的な緊張と対立が生じる。それぞれが異なった資源とコネを持ち、その全てが女公爵の関与を暴き、嘘とプロパガンダを断ち切ることの全てが、彼女が民衆と兄である国王に何をしたのかを証明するのに必要となる。